クラフトアーツ天
http://www.xn--ten-7d8e.com/古民家で暮らしながら夫婦で営む工房から生み出される陶器は芸術作品でも工芸品でもない、日常に溶け込む器その知られざるルーツにお話を聞いてきました。
01.作家の経歴と背景について
もともと陶器づくりに興味はあったんですか?
- 夢土
- もちろん無かったよ。若いころはフリーターで、
いろんな仕事を転々としては食いつないでいて、休みの日はずっとバイクに乗るそんな生活やった。
当時はハーレーに乗っててん。 - ワイルドな見た目の夢土さん
確かにハーレーに跨る姿が容易に想像できる - 夢土
- ある時ツーリングをしている時にたまたま山奥の工房でろくろに出会ってね、
ほらろくろってくるくる回るでしょ?
あれ(腕を回す夢土さん)バイクのモーターに似ているでしょ
ほな気づいたら、(陶器づくりに)ハマっちゃってね
取り付かれたようにやってたよ
30代から始めてね自分で穴窯を作って家も自分で建てて陶器を作ってた。 - 自分で家なんて建てられるもんなんですか?
- 夢土
- フリーターの経験がそこに活きてきたね
- 一代で築く作家の思考を聞くと驚かされるばかりだ。。
夢土さんはかなり特殊な経歴の持ち主だ。
他の作家さんとは少し違うような気がする
02.技術や工程の解説
一つの陶器が出来るまでの流れを教えてもらえますか?
- 夢土
- まずねうちは特殊な土からね、その厳選した土を練り上げるとこからはじめて。
- この工程は「土練り」といい土の均質化を図る重要な工程である。
- 夢土
- 次は「轆轤」で形を作る僕は「電道轆轤」で器の形を作って
やよいは「手回し轆轤」が好きやねん。
僕は腰が痛いから体に鞭打って「電道轆轤」で作ってる形が出来たら乾燥させる - どれくらいかかるんですか?
- 夢土
- うちの5合土鍋やったら大体2~3週間ほどかな
その後に模様を付けて釉薬っていうものをかけて焼くねん - そんなにテンポよく焼く工程に入るんですか?
- やよい
- うちは陶芸をされてる方にはよく驚かれるねんけど、「素焼き」を行わなくて
- 陶器を作るうえで素焼きはかなり重要な工程だそうだ。
素焼きの役割
- 作品中の水分が蒸発する
- 粘土に含まれる不純物が燃える
- 粘土自体が焼き締まる つまり作品のクオリティの安定性を担う工程という事。
- では一体なぜ?
- 夢土
- 乾燥させた後は 「素焼き」の工程を飛ばして「釉薬」をかける 「施釉」の工程に入ります。
釉薬 陶器の表面に付着したガラスの層の役割この釉薬は全部うちのオリジナルで、市販のものは一切使っていません。
- 装飾 ・・・多種多様な色・釉調を表現することが出来ます。
- 強度 ・・・ガラスでコーティングしてより充分
- 汚れにくい・・・水・汚れを吸収しにくくなります。
土に合わせて調合を考えて作っています。
素焼きを行わないことでもちろん安定性はないので、割れるリスクもあるし、思った通りに行かないこともある、でもその分良いこともあって、 他の陶器では表現できない釉薬が流れた模様とか、デザインに広がりが出るのでうちの器を見る時はそこも楽しんでみてほしいな - やよい
- その後に「本焼き」作業に入るねんけど
うちではいろいろな窯を経験したけど電気窯を使っていて温度は1230度で本焼き作業をしてる。
夢土さんは窯を開ける時が一番好きなんやって - プレゼントを開ける子ども見たいですね
- やよい
- そう、焼き上がりがどうなっているのか気になってそわそわするんやって(笑)
03.作家のこだわりと哲学
もともと陶器づくりに興味はあったんですか?
- 夢土
- むずかしいな、はっきり言うとそんなんは全く無い。
僕たちが作ってるのは芸術でも、作品でもなく
「使う人の生活に溶け込む器」で
だから1つ1つ作る時に命がけでとか特別なこだわりはないねん。
作りたいものを作る。飽きたら他の物を作るの繰り返し。
うちの作り方やと100パーセント満足する出来上がりになることは少ない。
例えば、目の前の壁の向こうに的があるとして、その的のど真ん中に石を当ててみって言われたら難しいでしょ? - はい、出来ないと思います。
- 夢土
- 僕はねその方向も距離も分かっているからある程度惜しいところには当てれるねん
陶器づくりもこれと一緒で、だから焼き上がりの時が一番ワクワクするねん 的に当たっているか。
外れているか、はたまた予想を飛び越えた驚きがあるか - やよい
- 昔良く言っていたのは一輪挿しってあるでしょ、入り口の細い、でも別に口の所が広くても一輪挿しとして使えるよね。芸術や作品は定義を付けるけど私たちが作るのは器使う人それぞれが使い方は決めればいいと思っている。
こうあるべきとか、こうじゃないといけないって言うのは窮屈でつまらないでしょ?
だから私たちの作る器は 陶器を知っている人たちからするすこし変わっているなと思われると思うよ - この形にとらわれない思想がクラフトアーツ天の魅力そのものであり器に金子夢土さん、金子やよいさんの想いが投影されていると思う。
紀元前10000年前から存在する「焼き物」というカテゴリーの中には、
それぞれの美学や手法が存在するが、それを持たないというのも、
美学でありクラフトアーツ天がブランドとして確立されている理由なのだと思う。
ライター
株式会社Aveire
上地智徳